解説・評論
12.152017
【世相診断】高齢者の自動車事故
高齢ドライバーによる自動車運転事故が社会問題になっています。身体機能が低下したお年寄りが走る凶器を操作するのですから危険この上もありません。事故原因は単なる不注意による運転ミスだけでなく、極度の認知・運動機能の劣化によるものといわれます。
この事故を防ぐために考えられる方法は3つしかありません。
1つ目は「高齢者には運転免許証を返納させる」ことです。しかし、一律「**歳まで」という制限はあまりにも空想的です。現行70歳以上の高齢ドライバーの免許更新時には特別講習を受講させることになっていますが心身機能に余程の障害がないかぎり更新されているのが実態です。すなわち安全運転に危惧がある高齢者でも免許更新を望めばかなうということです。
2つ目は「免許証の自主返納」です。これが簡単そうで難しいのです。多くは事故を心配する家族からの勧めによるものですが、高齢者本人は「自分はまだ大丈夫。だからできるだけ持ち続けたい」のが心情でしょう。返納によって行動範囲は縮小し社会生活における制約が増えることは高齢者の日常生活にも負の影響をもたらすかもしれません。ちなみに昨年の自主返納件数はこれまでの3倍以上になっているようですが、家族看視のもと自主返納を増やしていくのがせめてもの応急的対応かもしれません。
3つ目は「自動運転車」です。これは道路交通システムを飛躍的に変革することになり、高齢ドライバーの事故防止にも一定の解を もたらすかもしれません。しかし、技術開発レベルとしては2020年頃には最終フェーズに至るものの、交通インフラを作り換える必要があり、一般実用化するにはまだ数十年を要するのではないでしょうか。このような状況を考えると、2つ目の「免許証の自主返納」を今後とも強力に推し進めていくのが現実的でしょう。そのためには本人のみならず、 家族も含めた周囲へのより積極的な啓蒙活動が必要です。(佐藤哲治)